ブランド比較~何を主役にしているか?~
- polestarforeverlov
- 3月22日
- 読了時間: 5分
まず大前提として、4ブランドは「何を主役にしてデザインしているか」が違います。ラコステは身体と動き、VANは服装の文法、カステルバジャックは図像と物語、コーチは素材と使い勝手です。見た目のテイストが近い場面があっても、設計思想はかなり別物です。
ラコステ
ラコステのデザインは、ひと言でいえば「機能を削らずに、品位だけを足す設計」です。1933年にルネ・ラコステが小さな蜂巣状のpetit piqué素材の軽量ポロを生み、衣服にロゴを載せる先駆的なブランドとなりました。現在もブランドは自らを「スポーツとファッションの交差点」に置き、2023年以降はPelagia Kolotourosが全コレクションを統括。2025年秋冬では“現代的なフランスのエレガンス”を、2026年秋冬では“functional elegance”を掲げ、テニス由来をそのまま繰り返すのではなく、コートの外の都市生活へ拡張しています。
Lacoste、ほかに 4 件
プロの視点で見ると、ラコステの真価は少ない要素で緊張感を作ることにあります。襟、前立て、パイピング、プリーツ、ワニの配置密度だけで、スポーツウェアをファッションに引き上げている。たとえば Paris Polo は隠し前立てや同色ワニでテーラリングの静けさを持ち込み、テニス/ゴルフのポロではボンディングや軽量技術素材、シリコンのクロコダイルなどで機能と見た目を両立させている。つまりラコステは“スポーツを引用する”ブランドではなく、スポーツの構造そのものをエレガンスへ翻訳するブランドです。弱点は、運用を誤ると優等生的で無難に見えることですが、近年の外套、テクニカル素材、ベルベット、柔らかいテーラリングの導入は、その弱点をうまく回避しています。�
Lacoste、ほかに 4 件
VAN
VANは、服の形以上に**「着こなしの文法」**をデザインしたブランドです。公式も、1950年代からアメリカントラディショナルを日本に広め、1960年代に『TAKE IVY』を通じてアイビールックとそのライフスタイルを可視化したと説明しています。さらに、TPOという考え方、スタジアムジャンパー、スウィングトップ、Tシャツといった言葉やアイテムの浸透にも深く関わったとし、ブレザーについても3つボタン中1つ留めのロールモデル、3つボタン上2つ留めのアイビーモデル、ナチュラルショルダー、センターフックベント、ウェルトシームなどを明確に打ち出しています。�
VAN STORE、ほかに 4 件
デザインのプロから見るVANの凄さは、派手な造形ではなく“節度のデザイン”にあります。段返り3つボタン、薄い肩、BDシャツ、チノ、スウィングトップ、スタジャンという要素は、どれも単体では奇抜ではないのに、組み合わせると若々しい規律が生まれる。しかも、背面ロゴ入りスウィングトップが工場のミスをきっかけに定番化したという逸話は、VANがどれだけ所属感やクラブ感を記号化するのが上手いかを物語っています。弱点は、少し油断すると「懐かしい服」で止まりやすいこと。ただ、肩回りやアームホールの快適性改善、JUNYA WATANABE MANやbeautiful peopleなどとの協業を見る限り、更新する意思は残っています。�
VAN STORE、ほかに 3 件
カステルバジャック
カステルバジャックは、4ブランドの中で最も**「図像の世界を着せる」**ブランドです。本国公式はジャン=シャルル・ドゥ・カステルバジャックを、アートとファッション、転用、コラボレーションを先取りした作家として位置づけ、寄宿学校の毛布から作ったコートや雑巾素材の服を、初期のアップサイクルとして語っています。現在の公式でも、色、記号、詩的な物語を核に、スキー、家具、器、彫刻、スケートまで横断しており、本人は自分の仕事を“群島”のような連なりとして捉えています。日本公式を見ても、メンズ/レディースだけでなく、バッグ、財布小物、シューズ、ゴルフへ大きく広がっており、2025年春夏のカプセルでは本人の直筆アートをそのままウェアに落とし込んでいます。�
ジャン=シャルル・ド・カステルバジャック、ほかに 4 件
デザイン的には、これはシルエット主導ではなく、記号主導のブランドです。だから本来は、形を盛るより、面を確保してグラフィックを立たせた方が強い。一次色、色面、子ども性、ポップアート、ちょっとした紋章性が同居した時、このブランドは最もカステルバジャックらしく見えます。逆に危険なのは、記号を足しすぎて“ただ賑やか”になることです。日本でバッグや財布、ゴルフに展開しやすいのは、その図像言語が小物や雑貨にも転写しやすいからだ、と読むのが自然です。ただし同時に、ここは最も雑多にもなりやすい領域でもある。つまりこのブランドは、作家性が強いからこそ、編集が甘いと一気に散らかって見えるブランドです。�
ジャン=シャルル・ド・カステルバジャック、ほかに 4 件
コーチ
コーチは、4ブランドの中で最も工業デザインが強いファッションブランドです。1941年に6人の職人で始まり、Bonnie Cashinが色・比率・遊びを持ち込み、Stuart Veversは2013年以降、その遺産をニューヨークの自由さとポップカルチャー感覚で再編集しています。Tabbyは1970年代アーカイブの再解釈で、構築的なフォルム、付け替え可能なストラップ、シグネチャー金具という、非常に明快な設計骨格を持つ代表作です。さらにCoachのGlovetanned Leatherは野球グローブ由来のしなやかさと耐久性、経年変化の美しさを価値にしており、ここがブランドの根幹です。�
コーチ UK、ほかに 4 件
プロ目線で見ると、Coachの巧さは**「持った時に完成する」ところです。バッグの口元、マチ、ショルダードロップ、ポケット配置、金具の見え方がよく設計されていて、Tabby、Brooklyn、Empireのようなプロダクトは、使いやすさがそのまま美しさになっている。しかも現在のCoachは、2025年春夏の“perfectよりpersonal”、2025年秋冬の“clear silhouette”“heritage palette”“love-worn pieces”という方向に見られるように、新品の完全無欠さよりも使い込まれた個性**を押し出している。Re(Loved)やrub-off加工の“Loved Leather”はその思想を商品レベルまで落としたものです。弱点は、ロゴやシグネチャーを出しすぎると、素材の良さより先に記号が立ってしまうこと。Coachはロゴ先行より、レザー先行の時にいちばん格好いいです。�
コーチ UK、ほかに 5 件
総括すると、
ラコステは構造の品、
VANは作法の品、
カステルバジャックは記号の品、
コーチは触感の品です。
デザイン完成度の安定感ならラコステとコーチが非常に強い。文化の深さではVAN、作家性の強さではカステルバジャックが際立ちます。4ブランドは優劣で並べるより、何を主役にしているブランドなのかで評価軸を変えるべきです。�




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